2009.11.07
先進地の取組事例など学ぶ
歴史まちづくり法シンポジウム
歴史的建造物の大蔵で国交省の担当者らから歴史まちづくり法の説明を聞く参加者 |
2008年11月に施行された「歴史的まちづくり法」について行政担当者や先進地の取り組み事例に学び、川越市に活用できるか可能性を探るシンポジウムが、7日午後2時から仲町の山崎亀屋茶店の大蔵「茶陶苑」を会場に開かれ、100人以上の市民らが参加しました。
同法は、城・神社など歴史的な建物や町家・武家屋敷などのまちなみ・祭礼行事などの歴史・伝統資産を活かしたまちづくりを国が支援する法律。国交省・文化庁・農水省の3大臣の認定を受けることで、事業費の半分〜3分の1の助成を国から受けられるようになります。
これまでに、金沢市(石川)・高山市(岐阜)・彦根市(滋賀)・萩市(山口)・亀山市(三重)・犬山市(岐阜)・下諏訪町(長野)・佐川町(高知)・山鹿市(熊本)・桜川市(茨城)・津山市(岡山)の9市2町が認定されています。
シンポジウムは、市民グループ「川越織物市場の会」(西澤堅会長・約80人)と、NPO法人「川越蔵の会」(原知之会長・約200人)が主催。
両会はこれまで、蔵造りの街並み保存や旧・川越織物市場の再生に取り組んできましたが、将来的に歴史的資産を保全しつつ市内広域で良好な街並みを守っていくためには、川越が同法の認定を受けることが望ましいとの観点から今回のシンポジウムを企画したものです。
開会挨拶する原知之・川越蔵の会長 |
冒頭、主催者の一員として川越蔵の会の原会長が「私たちは、自分たちのまちは自分たちで守り、自分たちでつくっていくという強い気持ちで26年間、住民や商人たち・都市計画の専門家らを交えて地道に活動してき」とこれまでの活動を紹介。
「現在、一番街周辺は国の重要伝統的建造物群保全地域に選定され、行政の責任で保存が図られるまでになったが、川越織物市場・鶴川座・鏡山酒造跡など市内に点在する歴史的建造物が将来にわたって地域全体の景観としてに保全されるか疑問が残る」とし、「歴史まちづくり法は文化財行政とまちづくり行政の連携がポイントといい、今それを学び研究することが大変重要だと思う」と挨拶しました。
シンポジウムは、弁護士で川越織物市場の会の小島延夫事務局長が進行役を務め、国交省公園緑地景観課の脇坂隆一・景観歴史文化環境整備室課長補佐、文化庁文化財部伝統文化課の笠原隆・文化財保護調整室長、亀山市の認定に関わった三重大大学院工学研究科の浅野聡准教授がパネリストとして出席。

国交省都市地域整備局の脇坂隆一さん |

文化庁文化財部伝統文化課の笠原隆さん |

三重大大学院工学研究科の浅野聡准教授 |

3時間に及ぶシンポジウムにもかかわらず、会場には100人を超す市民の参加者が |
進行役の小島延夫さん |
歴史まちづくり法の担当者として国交省の脇坂さんが、法律制定までの経緯や意味などについてスライドを使いながら「歴史資産の保全や広告物の規制など景観を守る取り組みの一環で、美しい国づくり・質の高いまちづくりのための地方行政を応援する法律」と説明。
既に認定を受けた金沢市や高山市などの例を示しながら「市町村が策定した整備計画を国が直接審査する仕組みで、国指定の文化財を含んでいることが第一条件。次に『歴史的風致維持向上計画』がしっかり立てられていること。つまり、歴史的建造物があるだけでは駄目で、地域固有の歴史・伝統と、それを反映した人々の具体的な活動の両方が兼ね備わって初めて認定の対象となります」などと基本的な認定条件について話しました。
また、脇坂さんは「審査に当たり、市が歴史的風致維持向上計画を作成し申請することになるが、観光PRのような嘘っぽい表現は一切受け付けない。本当に市民も必要だと思っているのか、守る活動は続けられているのか、市の景観規制や保全整備事業・ソフト面の支援事業など、実施例を含め具体的にきちんと示すことが必要」と釘を刺しました。
文化庁の笠原さんは「文化財の保護とは、保存と活用のバランスが重要。文化財の建物や資産があれば、それをめぐり伝統や祭り・人々の暮らしがあって初めて活かされたことになる。有形・無形を問わず文化財と一体となって価値をなす周辺の環境を、文化的な空間を創るための計画区域として位置づけることが必要」と前置き。
「1枚の絵画や道端の石碑など、テーマを持って文化資産を見直すことによって新たな価値が見いだせることもある。文化財を広く愛していくためには、地域・住民も一体となって歴史的風致の維持向上に取り組むことが大切」などと話しました。
亀山市の認定に関わった三重大の浅野准教授は「古くから街並み保存を続けてきた関町と城下町の亀山市が合併するにあたり、東海道における歴史的資産としての歴史的風致維持に努力した。歴史的建造物などは、開発や所有者の世代交代時に取り壊されることが多く、待ったなしの状況。保全継承のための支援ができるかが、ラストチャンスを活かせるかどうかの鍵になる」と保全の苦労談を紹介しました。
桜川市教委の等平昌則さん |
シンポジウム後半では、参加者からの質問や意見のやりとりが行われました。
今春、同法の認定を受けた茨城県の桜川市教委生涯学習課の等平昌則主査が「認定の絶対条件である『歴史的風致』という言葉の意味を何度も考えた。その定義の中にある『情緒や風情を有する極めて良好な市街地の環境』を、どう文章で表現すればいいのか悩んだ。目で見るものだけではなく、音や香りなども歴史的風致だと思う。そこに行きたいと思わせるようにするのは、文章力が勝負」などと苦労話を披露。
「真壁地区の認定により、文化財への市民の理解・関心がものすごく高まった。周辺地区の保全機運も起こり、良好な景観形成ができるようになった」と認定の意義について話しました。
このほか、川越市都市計画部の鹿ノ戸健次部長、川越蔵の会の小野澤康弘市議、小宮山泰子衆院議員や、川越織物市場で買場紗綾市に参加している桐生市の鈴木宏・伝建群推進室主査、シンポジウムの会場となった茶陶苑の山崎正博代表、ぎょうだ足袋蔵ネットワークの朽木宏代表、川越市歴史的地区環境整備計画に携わった佐々木政雄・(株)アトリエ74建築都市計画研究所代表、川越織物市場の会の小金沢実さん、市内在住の医師・クリス・ブリュンガーさんらが、それぞれの立場から意見を述べました。
茶陶苑の山崎代表は「せっかく歴史的建造物を残しても、きちんと活用・再利用しなければ明治村のようになってしまう。一番大事なことは運営していくことで、行政の補助がなければ民間には限界がある。箱もの整備だけではリピーターがなくなることは目に見えているので、運営面でのサポートも柔軟に考えてほしい」と訴えていました。
最後は、川越織物市場の会の西澤堅会長が主催者としてシンポジウム参加の謝辞を述べ閉会しました。
(写真は仲町の山崎亀屋茶店の大蔵「茶陶苑」で)
鹿ノ戸健次・川越市都市計画部長 |
「川越蔵の会」の小野澤康弘市議 |
小宮山泰子・衆院議員 |
桐生市伝建群推進室の鈴木宏主査 |
「茶陶苑」の山崎正博代表 |
朽木宏ぎょうだ足袋蔵ネットワーク代表 |
アトリエ74研究所の佐々木政雄代表 |
川越織物市場の会の小金沢実さん |
市内在住のクリス・ブリュンガー医師 |
川越織物市場の会の西澤堅会長 |
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